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泊原発差し止め訴訟 札幌地方裁判所判決 その3回目 積丹岳事件

泊原発差し止めをめざす訴訟 札幌地方裁判所の判決でる 第三回目  

積丹岳事件

 前々は、2022年5月31日、泊原発廃炉をめざす会が10年前札幌地方裁判所へ提訴した被告北海道電力泊原子力発電所差し止めを求めた判決についてアップした。

 5月31日午後3時ちょうど、札幌裁判所の805号法廷の谷口哲也裁判長の判決主文言い渡し、の最初は「泊原発1号機ないし3号機は運転をしてはならない」だった。

 原告1,201名の願いに司法が応えた瞬間だった。

 わたしが直接裁判に関わったのは、この泊原発の訴訟を含めて三度だけ。

 まず最初の一回目は、1996年8月26日に札幌地方裁判所へ提訴した「士幌高原道路建設費・公費違法支出差止請求事件」。この裁判は前回アップした。

 次いで三回目は「積丹岳事件」。わたしは、泊訴訟と士幌高原訴訟の両方ともに原告となった。そして、今回アップする積丹岳訴訟については、わたしが裁判長へ意見書を提出。長文の意見書を二回提出した。

 今回は、この「積丹岳事件」について、もう大分前のことだが、少しアップしてみる。

 

積丹岳事件

 この裁判は、北海道警察積丹岳でボ-ド滑りをする要救助者の110番救助要請で、5名の救助隊員を現地に派遣。要救助者を救助隊員の過失で死亡させたもの。死亡者のご両親が札幌地方裁判所へ損害賠償請求訴訟を提起した。

 死亡したボ-ダ-のご両親がなぜ裁判をしなければならなかったのか。なぜ裁判にまで展開したのか。

 北海道警察は死亡した要救助者のご両親へ、積丹岳での救助搬出作業の説明にご両親宅を訪れている。ここで、例えばご両親への説明時に「北海道警察山岳救助隊の隊員の力量不足で、要救助者を救えなかった。申し訳ない」と、事実と詫びを語っていなら、裁判にはならなかったのだろう。

 北海道警察は謝らないどころか、ご両親宅に来たのは当日の出動5名のうちの一人も説明に来なかった。そして、救助当日の事実関係がなんら語られなかった、のだ。

 救助してほしい、と110番通報した自分の息子が、積丹岳で遭難死亡した事実の直後、現場に居た北海道警察山岳救助隊の隊員が一人も来ず、説明も現場の情況を語らなかったら、当事者でないわたしが普通に考えても、誠意のない公務員達、と思い考えてしまう。

 息子を亡くしたご両親にとって、最低でも亡くなった息子の情況や救助搬出状況を知りたいのは、親としてあたりまえで普通のこと。なんと、一審裁判でも被告道警の主張は、北海道民からの110番で出動する道警山岳救助隊は、本来の「警察官の職務」でなく「任意活動」のサ-ビス業務、だと主張・説明するに及んではご両親の立腹はあたりまえだろう。

 この訴訟を原告代理人として担当したのが市川守弘弁護士。最初、死亡した息子さんの両親は弁護士に相談。市川さんからメ-ルが「小山さんちよっと来て」と私にメ-ルがはいる。それで市川法律事務所に行ってみると、原告やその代理人の弁護士全員が、本格的な登山や山岳救助に素人。わたしと弁護士達の会議は、「ビバ-クとは何」から始まって、本格的な山岳救助についての説明と解説の討論会になった。

 そんな経緯と訳で、札幌地方裁判所の裁判途中で「小山さん裁判長に意見書を書いて」で、二度の意見書を裁判所へ提出することとなつた。

 

裁判の結論

 一審の札幌地方裁判所では、北海道警察山岳救助隊の過失を認めて損害賠償請求

を認める判決。

 2012年11月19日札幌地方裁判所判決、救助隊員の直近過失を、雪庇から

滑落させた「方向を常に確認するなど細心の注意を払わなかった」として1200

万円の賠償命令。

北海道と北海道警察は控訴。                                                                                                

 札幌高等裁判所の二審判決は、2015年3月26日、一審の過失と違う他の過

失も認定して損害賠償額を増額、一審と合わせて1800万円の賠償命令。控訴審

判決では、二番目の重要な過失を指摘。その判決文では「そりをハイマツに結び付

けた方法が合理的でなく、隊員がそりから離れた間に滑落させた過失があった」と

した。わたしが一審審議中に提出した「意見書」には、過失の連鎖で死亡に至る、

ことを指摘していた。ようするに、最初の過失がなければ次の過失は発生しないこと。通常の裁判では、過失の有無を原告と被告が争う場合は「直近過失」の一行動の

みを過失認定するのが普通なのだが、今回は複数の過失について認定されたことが

特徴。                                                                  

北海道と北海道警察最高裁判所へ上告。

 2016年11月29日最高裁所第3小法廷判決は上告を退ける決定。二審の

札幌高等裁判所判決が確定した。

 

それでは、この積丹岳事件の生存していた要救助者を死亡させた救助活動を時系列に記してみる。

1. 2009年1月31日、ボ-ダ-一人が積丹岳頂上から少し下部でホワイトアウト      

 のため下山できず、その場にビバ-ク。北海道警察へ110番。北海道警察救助隊員 

 5名が積丹岳登山口へ捜索救助のため出動。

2. 翌日、北海道警察救助隊5名は、要救助者のGPS緯度などの場所へ雪上車で向か

 い、途中からスキ-で。

 GPS国際緯度と国内緯度の違いが判らず、違う場所を探すが当然未発見。一度頂上 

 に登り、視界が良く下部の雪上車へ昼食のため向かって下る。少し下った場所でツエ

 ルトと要救助者を発見。

3. 要救助者が歩行できたので、要救助者を左右から救助隊員が支えて下山途中、この

 頃ホワイトアウト状態で視界悪く、右側へ寄り過ぎて雪庇から3人滑落。要救助者は

 200m、救助隊員2人は100m滑落。要救助者を寝袋に入れて、タンカのストレ 

 ッチャ-で、雪庇上の稜線まで引き揚げ作業開始。

4.滑落した稜線まであと150mを残して50mを一時間かかって引き上げ、疲労

 憊の引き上げ者二名交代のためハイマツの枝に一時ロ-プで要救助者タンカのストレ

 ッチャ-をビレ-。要救助者一人をその場に残して二人の隊員が上部へ向かう。山岳

 救助隊の行動規範原則「捕まえた要救助者を離さない」を簡単に違反。

5. ハイマツに結んだロ-プが外れて要救助者を乗せたタンカのストレッチャ-は、斜 

 面を斜面下部まで滑落。救助隊員はその場に一人もいなかったため、どのように滑落

 したのか不明。

6. 救助隊員は、テトレッチャ-滑落跡を辿っての要救助者の居る斜面下部へ下降せ

 ず。下部へ到達する回り道を知っていたが、なぜか救助隊員全員下山開始。

7. 次の日、北海道警察ヘリコプタ-は要救助者の居る場所へ着陸して、要救助者本人

 の死亡を確認。

 

 我が国の公務員に対する国家賠償訴訟の勝訴は狭きもの。公務員の故意や過失で、ケガや死亡の場合、損害賠償を請求できる。しかし、それは裁判で争わなければならず、その原告勝訴確立は3%といわれている。

 今回の積丹岳事件裁判では、110番した一般市民が死亡した原因は、公務員の山岳救助隊の過失だった。

 地方自治北海道警察山岳救助隊の過失の有無を争い、原告が勝訴した我が国最初の裁判となった。

 

裁判関係者全員が登山と山岳救助について、の知識と技術に素人

 わたしが市川さんからのメ-ルで法律事務所に行って、原告やその弁護士全員が、本格的な登山や山岳救助に素人、だったのだが。なんと、被告の北海道警察も「登山」に全員素人だった。勿論、被告北海道警察や救助隊関係者と代理人弁護士も、だ。北海道警察山岳救助隊は年に2度の救助訓練を行っていることが公判中に判明したが、救助隊員は登山を行ったことがなかった。北海道警察山岳救助隊の5人も、なんと本格的な登山(ハイキングではなく)は素人だった。ハイカ-でも知識と技術を習得している地形図や磁石の使用方法、GPS使用にも素人だった。裁判官もたぶん素人だと思われるので、関係者の全てが登山や救助に素人の裁判だっだ。

 それと、これは民事訴訟の裁判に関わる私を含めた誰もが不思議に思うことがらが、裁判公判中に出現するのである。それは、被告の北海道警察山岳救助隊は、救助活動中に何ら過失が無かったことを証明する書類を裁判長へ提出して、そして判決に至るのだが。それはそれは、わたしから視ると、通常の救助隊捜索や救助搬出の常識から外れた、裁判官から見ても過失、が度々出てくる、のである。これは驚くしかない。

 

わたし達一般市民は、裁判とは縁遠い、はず、なので原告や被告が裁判長へ提出する書類がどの様なものなのかを少し説明する

 まず「準備書面」。原告や被告の主張を裁判長へ提出する書面。原告の訴状に対して北海道警察山岳救助隊の出動や救助の様子を書いた書面や、被告の「原告の過失指摘」を否定する書面、など。例を挙げると「第6準備書面」では、平成23年6月7日、札幌地方裁判所民事第1部合議係御中とし、被告代理人弁護士10名の氏名押印がある。

 次に、「乙号証写」。例を挙げると被告側の専門家の意見書や当日の救助隊員各々の陳述書など。「乙46号証」では、低体温症の知識や治療技術の専門家の「意見書」で、28ペ-ジに及ぶ。また「乙51号証」は、救助隊員についての説明文。生年月日から北海道警察の経歴。そして山岳救助隊員経歴と今回の積丹岳の救助活動全部の書面。

 三番目は「甲号証写」。これは原告側から裁判長へ提出の書面。例を挙げると私が書いた裁判長宛ての意見書「甲16号証」。

 その他に「検証の方法についての上申書」や「証拠調申出書」「証拠説明書」「検証の申し出」「・・・・意見書」「証人調書」「準備書面最終」など、いろいろとある。

どんなことが書かれているのか、その中でわたしの「意見書」を巡る被告の反論「第6準備書面」を少し1ペ-ジと4ペ-ジをアップしてみる。

 

「第6準備書面」平成23年6月7日

 準備書面の表紙は、札幌地方裁判所民事第1部合議係 御中、と書かれ、その下部に被告代理人弁護士10名の記名捺印がある。

 

 

 この被告が提出した、原告の提出した第5準備書面に反論する、第6準備書面でどの様なことが書かれているのか見てみる。

 まず「任意活動と法的義務」では、北海道警察の山岳救助隊の活動の全部が北海道警察の本来の職務ではなく、北海道道民が山中から110番通報して救助要請し、それに応える北海道警察山岳救助隊活動はサ-ビス業務の任意活動。救助隊員の過失で110番した本人が死亡したとしても、何ら法的義務を負担していない、と裁判所に宣言した文書、になつている。それは、被告が裁判所に最初に提出した「第1準備書面34ペ-ジ」にも書かれている、と主張している。

 北海道警察山岳救助隊は、過去大雪山トムラウシ山において大型低気圧通過時に、10人が死亡する大量低体温症遭難が発生した2009年の夏以降、札幌市内において「安全登山シンポジウム」を開催している。この集会では、北海道警察山岳救助隊長等が集会参加者へ必ず呼びかける言葉がある。それは、「山中で遭難事故に遭遇の時は110番通報してくれれば、北海道警察山岳救助隊が駆けつけます」なのだ。

 そして、以下の北海道警察の主張にいたっては、北海道民の命と財産・暮らしを守る北海道警察なのに、何を言っているのか訳が分からなくなってしまった。現在ウクライナで起きている力による領土拡張戦争が、その理不尽な主張の尤至極だ、とわたしは考え、北海道警察の主張がこのロシアの主張に似ているようにわたしには見える。

 普通、公務員が不祥事を起こすと、それは全体からするとほんの一部の公務員の事で、大部分の公務員は大丈夫、と擁護する。だがこの主張は、逮捕権を持っている権力機関の、大それた理不尽な、北海道警察最高責任者から末端の全ての警察官まで、全部の発言なのだ。

北海道警察の主張

 百歩譲って、同隊の行動のいずれかに何らかの不手際が認められたと強いて仮定

しても、それは法的義務に違反するものでないから、被告が賠償の責めを負う理由

はないのである。

 

 ちなみに、北海道警察の主張する「山岳救助活動は北海道警察の任意活動」に対して、札幌地方裁判所の判決は北海道警察の主張を明確に退け、以下の通り

    個人の生命、身体の保護を警察の責務とした警察法警察官職務執行法の規定を

踏まえ、「適切に救助しなければならない職務上の義務を負う」。

 

 警察官が勤務時間中に行う仕事に、法的義務を負わない、そして責任のない任意活動と呼ぶ仕事が、一体全体あるのだろうか。勤務時間中に行う責任を伴わないサ-ビス業務とは、何のことだろう。

 

出で来るわ出てくるわ、北海道警察山岳救助隊の不手際

 私はこの積丹事件で、二度にわたって裁判長宛てに意見書を提出したのは、この前述で記している。

 その意見書は、原告の要請で当時の5名の救助隊員を証人喚問した、その前に一回と、その後に二回目。

 まず一回目は、原告の主張する被告山岳救助隊の「過失」5項目に対する、被告の反論がほぼ出そろった段階。

 ここで不思議なことが起こった。通常は被告の山岳救助隊や隊員の行動は、裁判所へ提出する反論文書には過失行動は書かない、と私は考えるのだが。私が読み進めると、なんと出るわでるわ、次々と30箇所の不手際箇所になったのである。わたしが裁判長へ提出した一回目の意見書には次の様に記載した。

4.要救助者が死に到った原因

(1)道警救助隊が救助隊員の発令をした時点から、救助隊が要救助者を見捨てて

下山するまでの、救助隊の判断違いや判断ミス・行動ミス・過失・義務違反などを

文書の下線で示した。

下線ケ所は30ケ所である。

 

 わたしが二回目の意見書を裁判長に提出したのは、救助隊員の証人喚問をして、その証言内容に、又また不手際が散見されたから。

 

 ここまで積丹事件について、長々と書いてしまった。わたしがここで書いた文書では、北海道警察の山岳救助隊の活動を責めるつもりで書いているわけではない、のだが。積丹岳事件の公判の傍聴(わたしは一年の内の数か月をネパ-ルで生活しているので全部の傍聴はしていない)をした範囲では、被告から出てくる文書は、ことごとく登山や山岳救助に素人の文書としか思えないものばかりだった。それで、このような説明文書になった訳だ。

 

 わたしが裁判長へ提出した二回の「意見書」は、一回に付き40ペ-ジを越える長文なので、ここに掲載しない。

 わたしのブログにアップしているので、インタ-ネット検索したら見れる。

 ちなみに、わたしの意見書の裁判での正式名称は「証拠物・甲第16号証・意見書・平成23年4月18日」。

検索は第一回目、「koyaken4852のブログ 2016年12月5日」。

第二回目は、「koyaken4852のブログ 2016年12月6日」。