ネパ-ルの王宮と寺院や仏塔 その六十九回目
パシュパティナ-ト その五回目
牡牛 ナンディ
カトマンドウ市内のパシュパティナ-ト寺院五回目。
前回は、パシュパティナ-ト寺院と併設されている、火葬場ガ-トの写真を見た。
今回はパシュパティナ-ト寺院の西門から入場して、寺院内を見るとすぐ見える牛のお尻、ナンディと呼ばれるシヴァ神の乗り物の写真を見てみる。
牡牛 ナンディ
パシュパティナ-ト寺院の中を覗くと、金色のナンディ(牡牛)のお尻が見える。ナンディはシヴァ神の乗り物。寺院内は撮影禁止でナンディを前から写した写真は見当たらない。
シヴァ神の乗り物がナンディ(牡牛)。このためにネパ-ルでは牛が神と同意語になっている。1990年のネパ-ル民主化による憲法から「ヒンズ-教を国教とする」の条文がなくなるのに伴ない、牛刑法もなくなる。牛の傷害罪や牛殺罪がなくなった。
ちなみに、ネパ-ルでは水牛や高山牛のヤクは、どういう訳か牛部類には入らない。不思議の国ネパ-ルの不思議のひとつ。
ネパ-ルでは、牛は大切にされている。神聖化した牛は、どう云われているか。
日本では「嘘ついたら針千本飲-ます」。ネパ-ルでは「嘘ついたら牛肉食-べらす」。
ネパ-ル憲法とヒンドゥ-教
ネパ-ル全土で民主化が始まる以前には、ネパ-ル憲法の条文に「ヒンドゥ-教はネパ-ルの国教」と規定されていた。そして、憲法に国王制が規定されていて、「ヒンドゥ-教徒の国王」とされていた。
日本に住むわたし達国民は、政教分離を謳った憲法下で暮らしている。ので、なかなか政教一致の国政がどの様なのか実感がない。
政教一致の国政を少し説明しよう。説明、と云うよりもわたしの見解。
ヒンドゥ-教には戒律と云おうか、教義として信者が守らなければならない諸々の事柄がある。その一つがシヴァ神の乗り物が牛なので、神様と同等の位の牛を守る必要が生じた。
憲法条文を全国民に守らせる目的で、刑法や民法などの規定で、強制力規定条文が国会で成立する。牛刑法もその一つとして規定された。
わたしの所に、「牛刑法」全条文の文書があったのだが、どこにしまったか見当たらない。日本語訳の条文だった。その内容は、牛を傷つけたら懲役○○年。牛を殺したら懲役○○年以上。など。
政教一致の国の法律がどの様な物か、ご理解いただけただろうか。ネパ-ルの場合は、政治や法律の中にヒンドゥ-教が有るのではなく、ヒンドゥ-教教義生活の中に政治経済や諸生活があるよな関係になるのだ。
わたしにはどうも理解不能で不思議の社会・国に映る。
支配層だけが優遇のカ-スト
ヒンドゥ-教が国教の時は、当然にその宗教の教えが、法律として規定されていた。牛刑法の他にも決定的なのがある。カ-ストがそれ。
ネパ-ルのカ-スト制度は、ヒンドゥ-教の教義の一つ。
法律の条文から、カ-ストの意図をわたしなりに読み解くと。カ-スト中の最高位カ-ストのためにだけ、教えの教義が有る様に思えてならない。
ネパ-ルのカ-スト
わたしは,カ-ストの上下関係を高低で表現している。どうして上下でなく髙い低いで現すのか、考えてみよう。
現在のカ-ストは、ヒンドゥ-教徒だけの教義だが、以前の憲法に政教一致規定時代は、全国民に適用されていた。ネパ-ル民法の大部分を構成するカ-スト条文はこのような物。その中で男女の婚姻や性関係を規定した条文が次。
1854年ネパ-ル民法(1854年に成立し、以後ネパ-ル民主化前まで)。全条文の三分の一が性関係の条文で、法律条文化し強制力をもってカ-スト制度を守っていた。
○最高位カ-スト女性と下位カ-スト男性との性的結びつきは、男性に懲役2年。その女性は男性のカ-ストに降格。
○最高位カ-スト女性と男性のカ-ストの低さに応じて「懲役3年」「懲役1年と奴隷」「懲役4年と奴隷」「懲役8年」など。
○不可触カ-スト男性とでは、男性が死刑で女性も不可触カ-ストへ降格。(不可触民は、けがれているカ-ストで、他のカ-ストはこの人々に触ってはいけない。不可触民の持ってきた水やご飯を飲み食いできない)
ネパ-ル民法から、ネパ-ルの政教一致憲法の解釈や内容をみた。
同じカ-スト内の結婚を「カ-スト内婚」といい、内婚で成り立つ集団を内婚集団と呼び、最高位カ-ストだけ先祖代々、冨と名声や職業地位などあらゆる高位維持のために法律があることが分かる。
最高位カ-ストの地位や身分を破る結婚や性関係は、民法法律ではあってはならない性的犯罪。この1854年ネパ-ル民法は、紀元前200年から紀元後200年までにインドで成立した「マヌの法典」の意識と同じだというから、ヒンドゥ-教の歴史が分かる。
カ-ストの男性支配制度
ヒンドゥ教徒にとつての組織原理は、家庭の内外全てにおいて常に男性が優位で、女性が劣位である。一言では男尊女卑の宗教社会。
ネパ-ルのヒンドゥ教徒にとつての結婚とは、両親が善根をつむために自分の娘をお布施として男性に捧げること。政教一致憲法でヒンデゥ-教を規定するとは、こうゆうこと。
ネパ-ルのヒンドゥ-教徒の男尊女卑や功徳については、またの機会に書くことにしたい。今回はパシュパティナ-トのナンディの話に戻る。
参考資料
ネパ-ル紀行 三瓶清朝
パシュパティナ-ト寺院の牡牛ナンディ
神様の乗り物をネパ-ル語でヴァ-ハナ。
シヴァ神のヴァ-ハナは牡牛のナンディ。シヴァのまたの名異名は、パシュパティपशुपति、で、その意味は牛の王。
パシュパティナ-ト寺院を外から見る 金色のナンディ
西門から奥の寺院が見える
奥に寺院の入口
寺院の外ではお祭りの送り火か 荼毘に付した人の家族か