ネパ-ルの雪崩 その9 インド・ニルカンタ峰の雪崩 第8回目

ネパ-ルの雪崩 その九 インド・ガルワ-ルヒマラヤ・ニルカンタ峰の雪崩 第八回目

前回はパキスタンのスキムブルム峰のベ-スキャンプ(BC)を襲った氷雪崩を見た。

 このブログの標題は「ネパ-ルの雪崩」となっているが、ネパ-ルの山だけでなくパキスタやインドヒマラヤの雪崩も見てみる。

 

インド・ガルワ-ルヒマラヤ・ニルカンタ峰 6、596m峰の氷河雪崩 6名行方不明

 1993年9月30日、7名の北海道帯広登山隊はニルカンタ峰を登攀していた。キヤンプ2から上部のキャンプ3を目指してル-ト工作中。ニルカンタ峰北東稜の氷河が北壁側に落ち、雪崩となって北壁登攀中の6名を襲った。他の一名は前日からの高度障害でキヤンプ2で様子見をしていた。

 6名は北東稜から北壁側にトラバ-スして直上し、C3建設のため再度上部の北東稜に戻るル-トメイキング中。16時過ぎにC2に居た隊員がテント内で雪崩の大きな音を聞く。テントから出て見ると、北壁側に雪崩の雪煙が高く舞い上がるのを見る。この日6名はC2に戻ることはなかった。その後、C2からベ-スキャンプのコックとインド係官のリエゾンオフイサ-へ連絡を取り合う。

次の日、C2の隊員は双眼鏡で北壁を眺めるが、何一つ生存情況を見つけることができなかった。

 隊員一名とインド人コックとリエゾンが下山。インド関係機関へ事故遭難を知らせ、ヘリコプタ-の捜索を依頼。

 ヘリの空中捜索で、北壁下部に雪崩のデブリとザック2個や登山靴を発見するが、次の日のヘリ捜索では新しい雪崩痕があり、前日のザックや靴は見えなかった。 

この行方不明の登山隊員に私の山友人がいた。

 

リエゾンオフイサ-(LO)

 インドやネパ-ルでの海外登山隊は、政府の係官が随行する。この政府係官をリエゾンオフイサ-と呼ぶ。

 ネパ-ルは、エベレストなど8千m峰14座のうち8座が聳える登山観光国。登山の諸々の約束事が法律で規定されている。その法律に基づいた詳細規定は、プロセスとして内閣閣議において大臣全員の承認で決定され、広報されている。

 ネパ-ルでは登山許可申請のできる山を、メジャ-エクスペディション・ピ-クとライトエクスペディション・ピ-クに二区分している。メジャ-エクスペディション・ピ-クは、ネパ-ル観光省登山局に許可申請し登山料を支払う。又、ライトエクスペディション・ピ-クはネパ-ル登山協会へ申請し登山料を支払う。この区分する基準は6500m以上か以下の標高。互いに以上以下は混合した山もあるがほぼこの通り。

 登山隊にリエゾンが同行するのが、メジャ-エクスペディション・ピ-クの6500m以上の山に限られる。リエゾンの役割は、登山隊が申請し許可された内容通りに行動しているかどうかを見守(監視)ること。例えば、登山隊の滞在した場所にゴミを残置した場合は、事前に登山局にゴミ処理に関するデポジット金を預けたものが返却されなくなる。

 結構真面目なリエゾンがBCまで付いてくるが、BC手前の村くらいまでしか来なくなり、最近ではカトマンドゥから動かない事例も発覚して問題になっていた。

 登山隊はリエゾンに20万~30万RSルピ-を支払う。ネパ-ルの公務員の初任給は24,000RSルピ-(定期昇給は年に60RSと少ない)なのでその金額の大きさが分かるだろう。1RS=1円。

 カトマンドゥ在住の日本人で、私の友人が居てネパ-ル山岳協会会員なのだが、リエゾン制度の廃止を提言。だが、安月給公務員の既得権化しているこの制度、とても廃止はできないとのこと。

 今年の1月に、冬季エベレスト隊に同行したリエゾンがBC約5千mで、高山病のために死亡している。公務とはいえBCまでの本格的なキヤラバンを行うし、命がけの仕事。

 

ネパ-ル観光省登山局がネパ-ル山岳協会を相手取り行政訴訟

 ネパ-ル政府に登山許可申請が始まって以来、ライト登山はネパ-ル山岳協会が担当してきた。この山岳協会は民間団体扱い。

数年前、突然だった、観光省は民間の山岳協会が許認可権をもつのは違法、と裁判を始める。

 一審の判決、「観光省登山局が全ての登山許可権を持つ」。ネパ-ル山岳協会は登山許可権と登山料の収入を失うのか。登山協会は最高裁判所に上告。2016年1月だったと思う、最終判決の最高裁判所判決、「一審判決を破棄し元通りに、ライトエクスペディションの登山申請はネパ-ル登山協会へ、登山料は登山協会へ納付」。

 私はネパ-ル登山協会の会長さんと夕食を一緒にしたことがある。名刺を交換して、氏名の前にオフイサ-と書いてあった。登山協会の会長職は公務員だった。なるほど、リエゾンオフイサ-と同様に、登山と関わる公務員なのだから裁判所も既得権を優先したのだ。民間団体なのに会長の仕事が公務とは?。

 

以下はニルカンタ峰登山隊 登山事故報告書・追悼集より

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ニルカンタ峰北東稜 

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崩落前の懸垂氷河と崩落後

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C2からル-ト工作予定と北壁側に崩れた氷河の図

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