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素晴らしいネパ-ルへの教育支援活動 「ネパ-ルの山村におなご先生を」

 2017年2月2日木曜日の北海道新聞夕刊2面に、素晴らしいネパ-ルへの教育支援活動が掲載されていた。

 その内容は、「ネパ-ルの山村におなご先生を」の標題で、NPO法人日本ネパ-ル女性教育協会が、ネパ-ルのポカラ市内に「さくら寮」を建設して大学生の教育支援をしているというもの。ポカラ女子大学の初等教育教員養成課程の学生を一学年10名2年間の期間、この寮の食事と生活を支援し、卒業後に地元の山村で教師の職に就く女性を3年間の期間給料を支給する。

支援金額は毎年1000万円で、全てが日本人のカンパで賄われている。

 ネパ-ル人の識字率は、20年間の鎖国から開国した1950年で4%だった。その後、国際連合や諸外国の教育支援もあって、右肩上がりの識字率になっている。しかし、私達の住む日本の様な義務教育制度になっていないので、到底100%にはなっていない。

 この日本の民間のプロジェクトと云おうか、支援活動は2006年に始まり、100名の卒業者が出る今年中に終了し、日本のJICA(国際協力機構)がその後3年間は引き続き支援活動を続けるらしい。

 道新の記事の中にはカ-スト制度や男尊女卑にも触れて、女性への支援の必要性が書かれている。

 ネパ-ルは国土の資源に乏しく、つい最近まで王国だったり歴史のある国で、日本と似通ったところがある。

 私は10年前から札幌とネパ-ルを行き来してカトマンドゥ市内に借家暮らしをしている。10年間しかネパ-ル社会やネパ-ル人と接していないが、少しネパ-ル人の生活観や世界観などを知る様になってきた。

 ネパ-ル人の全てではないが、ネパ-ル社会はヒンドゥ-教社会と云える。ヒンドゥ-教徒は人口の80数%で、つい最近まで憲法にヒンドゥ-教が国教と謳われ、その憲法条項を国民に定着させる目的で、刑法や民法などにヒンドゥ-教教義とその教義違反の罰則を規定されていた。その規定はどの様なものか、日本人には理解できない事項もある。一例だが、「上位カ-ストの女性が下位カ-ストの男性と結婚すると、男性は懲役00年・その後奴隷として扱う」「上位カ-ストの女性が下位カ-ストの男性と結婚すると、男性は死刑」。牛刑法では「牛に傷害すると懲役00年」。「牛を殺すと懲役00年」。

 

 ヒンドゥ-教には結婚制度やカ-スト制度と男尊女卑が教義として存在する。その教義を強制する法律が制定されていた。牛刑法はヒンドゥ-教のシヴァ神の乗り物の牛を神聖化し、そのヒンドゥ-教そのものを国民に強制する法律。

 1990年ころから始まったネパ-ルの民主化で、2006年5月18日にようやく国会で政教分離(ヒンドゥ-教の国教廃止)を満場一致で決定している。憲法の「ヒンドゥ-教が国教」の規定が無くなり、罰則も無くなった。しかし、ヒンドゥ-教がなくなった訳ではなく、その教義は国民の生活に今なお根ずいているのだから厄介だ。

 私がネパ-ルで生活しそこで知ったネパ-ル社会と、この道新の教育支援活動を少し考えてみたい。ネパ-ルの社会や人々について、日本とは全く異なることで少し気を付けたいことがある。私がこの日本の教育援助活動で気が付いたことが二つ。

 まず一つ目。ネパ-ルの学齢期児童の小学校就学率は1950年に0.7%だった。その後この就学率が右肩上がりで改善されたとはいえ、山村の家庭は貧しくて子供を学校に通わせれない現実もまだまだある。そういう山村社会での日本人による教育支援活動は本当に大切なことだとは分かる。

 NPO法人日本ネパ-ル女性教育協会の目的が「女性の教職員を増やす」のであれば、目的に叶っていよう。しかし、活動目的がネパ-ルの学齢期児童の就学援助なら話は違ってくる。そもそも高校まで通える女性の家はカ-ストでは上位カ-ストに属し、援助がなくても大学まで通える経済状況と云える。そこに支援することがどういうことなのか。お金持ちに支援することになる。ネパ-ル社会全体では貧富の差が、ますます開くことに力を貸すこととなる。

 2015年4月25日のネパ-ル大地震で日本の赤十字からネパ-ル政府へ援助金が届けられた。日本人のカンパ金だ。ネパ-ル政府の役職員は上位カ-ストに属する人で占められている。私の耳に入ってくるネパ-ル人の声は、支援金がネパ-ル人の下位カ-ストの市民にも届けられてはいるが、その殆どが上位カ-ストの市民に届けられ、貧富の格差が開いたと聞かれる。

 日本から届けられたお金が、ネパ-ル政府の役職員の手で市民に渡される過程で、その役職員と同じカ-ストの市民に行くのは当然とまでは言えないが、考えられることではある。教育支援と同じではないが、似たような事態に見える。

 気づいた点二つ目。ヒンドウ-教社会には支援する、支援してもらう、の思考や思想は稀薄だと思われる。これはヒンドウ-教の徳を積む行為と関係し、支援してもらう側は支援する側の人に徳を積ませてやっている、と理解する方が良い様に思う。

 このことはヒンドウ-教の輪廻転生とも関係して、ヒンドウ-教徒にとっては徳を多く積むことが又人間に生まれ変われると考えられているから。

 ネパ-ルの一般市民生活から考えて、日本の教育支援活動は、ネパ-ル人から見て「徳を積む」行為としか思われていない、と理解する方が自然だろう。

 ネパ-ルの教育支援で考えなければならないのは、小学校教育がたとえ授業料無料だったとしても、家が貧しいなら家の手伝いがあって通学できない子供達のことだろう。この子供達への直接支援でもない。子供を学校へ通わせる程度の家の経済になる様な助けが必要。

 

ネパ-ルの貧富と男尊女卑の影響を的確に表わしている識字率を見てみる。

ネパ-ルの識字率

1950年  4.4%

1955年  5%

1970年 11%

1981年 20.57%

1991年 32.98%

1991年 40.% (女25%)

1992年 25.6% (15歳以上)

1996年 42%

2001年 48.61% (15歳以上) 男62.7 女34.9%

      カトマンドゥ首都圏73.7%

      ネパ-ル極西部44%  男65.3% 女27.4%

      貧困家庭の識字率11.6%  男36.7% ダリット最低カ-ストの女7%

2002年 60% (15歳以上)

2004年 42% (15歳以上)

2006年 男59.6% 女24.0%

2008年 52.% (15歳以上)  男63% 女35%

2010年 男85% 女73% (15歳~24歳)

2010/2011年 60.9%  都市部77%  農村部57%

    最も高いカトマン ズ都市部 (Urban-Kathmandu Valley ) 84.9 %

    最も低い中部タライ農村部(Rural Tarai-Central) 40.8%

2011年 57.4%

2011年 59.63%

2011年 65.9%

2015年 63.9%

 

参考出展物(統計の取り方で若干異なる)

ネパ-ル トニ-・ハ-ゲン

ネパ-ル紀行 三瓶清朝

アジア読本 ネパ-ル

「世界の統計」 ネパ-ル国勢調査

公益財団法人日本農業研修場協力団 国家計画委員会

日本ユネスコ協会連盟 途上国の教育支援世界寺子屋運動プロジェクト

ユニセフ世界子ども白書   

独立行政法人 国際協力機構(JICA)

ユネスコ アジア文化センタ-