ネパ-ルの王宮と寺院や仏塔 その百二十三回目
カトマンドゥ盆地内の寺院や仏塔
ボダナ-ト仏塔と、その周辺地域の僧院と寺院
6.ダブサン・ゴンパ カギュ派
前回はタ-リ-リュック・ゴンパの写真を見た。
今回は、タ-リ-リュック・ゴンパのすぐ東隣にあるダブサン僧院。
この僧院、ネパ-ルでは副業に熱心。アパ-トからゲストハウス、そして仏具店まで。
ダブサン・ゴンパ敷地内には、五色の大きなタルチョ-がはためいている。このタルチョ-、チベット仏教では欠かせない仏具。経典が印刷され、風にはためくと経典を読んだ功徳を得られ、悪魔がタルチョ-の布にからんで悪魔祓いの役目を果たす。
タルチョ-
タルチョ-は、チベット仏教独特の祈禱旗。
仏教伝来以前のボン教時代からあり、木や竹の竿に細長い布の幟(のぼり)を付け、立てる。
チベット仏教の僧院や信者宅、ヒマラヤの山々の峠などに立てられ、風になびいている。
その役割は、チベット仏教の悪魔祓いで、寄りついてきた邪悪なものをタルチョ-に巻きつかせ、風によって去らせる。又、タルチョ-に経文が書かれ、風になびくたびに読経したことになる。マニ車と同じ功徳があるらしい。
日本には次のような説、話があるが本当かどうか
日本の5月の子供の節句に行う鯉のぼりは、このタルチョ-が原形と考えられ。
江戸時代、中国から朝鮮半島経由で、タルチョ-が日本に伝えられた。それが、当時の江戸の気風と云おうか、単なる仏教教義を江戸市民の風習へ変容。
風の流れを水の流れに見立て、そこに鯉の魚を浮かせる発想、実に大胆な江戸時代のデザイン感覚。浮世絵や東海道五十三次の発想や絵心と同様に、江戸文化のひとつ。
端午の節句に男の子の成長を願い祝うという意味で、これも家々の庭先で、悪魔祓いの役割を担う。
タルチョ-の五色
タルチョ-に印刷されている五色の順番は、青・白・赤・緑・黄の順。それぞれが青が天・白が風・赤が火・緑が水・黄色が地を表し、仏教宇宙世界の五大を表現。チベット仏教界では、この五大の「大」が重要。
日本の仏教界の「大」
日本でも、仏教の世界では「大」が使用されている。
わたしが考えるに、京都においてお盆の最終日に行われる、京都五山送り火の大文字焼きの「大」の字、チベット仏教が中国から朝鮮半島を経て、京都に伝わり、平安時代には大文字焼きの形に伝わったのでは、と。
京都の五山送り火に行われる「大」文字焼きは2ケ所
金閣寺の「大」焼きがあって、それでは銀閣寺でもやってみたいと、銀閣寺裏山でも始まって、二か所になった。
わたしは、京都五山送り火には、火をつける人や、それを見る京都市民、そして世界中からの観光客たち、それぞれが自分の、煩悩を取り払う、思い。
又、それぞれが、身内の亡くなった方を偲んで、思いを込めて、と考える。それが仏教の「大」の功徳。
タルチョ-の五色説明
少し調べてみた。タルチョ-の五色の説明は、諸説ある。
「岩波仏教辞典」は、青・黄・赤・白・黒の5種の色。五正色は五方の正色の意味で(五間色)緋・紅・紫・緑・磂黄(くりげ)。 「仏教故事名言辞典」では、1950年に制定された国際的仏旗は青・黄・赤・白・樺の五色旗。 「仏教法具図鑑」の五色幡(ごしきばん)は、青・黄・赤・白・黒の五正色。 「仏教用語辞典」は、五正色(ごしょうじき)・五大色とも。青(しょう)・黄(おう)・赤(しゃく)・白(びゃく)・黒(こく)。 「仏教用語辞典」の仏旗ぶっきの説明に、1889年米人の仏教信者ヘンリ-・オルコットの発案で制定。色は青・黄・赤・白・淡紅、淡紅が紫になる場合も。
ダブサン・ゴンパ
ダブサン・ゴンパ入口の門
タルチョ- 五色祈禱旗