ネパ-ルの登山事情

ネパ-ルの登山事情 エベレスト8、848m

 先月の4月8日~9日に北海道海外登山研究会が開催された。この研究会は1980年代から毎年開催されている。北海道内の海外登山経験者や興味のある人達が4・5十名が集う。

 今年の研究会では、下記のネパ-ル政府(観光省登山局)から広報された検討事項が討議議題となった。

 

ネパ-ル政府が改定検討中の登山規則、近々閣議決定予定

残念、遅かったネパ-ル政府の判断

1.ガイド等を伴わない単独登山の禁止。
2.全盲、義足など身体に障害のある人々の安全確保の為原則登山禁止。
3.75歳以上の登山者の禁止。
4.8000m峰の登山する登山者は7000峰登頂経験をもつこと。
5.ヘリコプターは救助活動、ロープ等の登山用品を運ぶ以外にはベース・キャン  プより上部では使用できない。

 

これらの登山規則改定のための検討事項は、唐突に出されたものではない。

 3.75歳以上の年齢登山者の登山禁止事項は、サガルマ-タ(エベレスト)の最高齢登頂競争に終止符を打つことが目的。

 この改定を検討することは、もう2年前くらいからネパ-ル政府が表明していて、昨年2016年8月にも再度の広報をしていたのだ。

 ネパ-ル政府の決断遅れが、残念な結果を招いてしまった。今月5月6日、85歳のネパ-ル人がエベレストに挑みベ-スキャンプで死亡した。このネパ-ル人の氏名はミン・バハド-ル・シェルチャンさん。

 

今年2月にエベレストへ向かうことを発表していた

 今年86歳になるミン・バハドール・シェルチャンは再びエベレストを目指す。カトマンズで開かれたプレス・リリースによれば日本の三浦雄一郎さんの持つ最高齢登頂を破るべく4月1日よりBCに向かい5月中旬には登頂する計画である。シェルチャン氏は元グルカ兵としてイギリス軍に所属していた退役軍人で有る為、同時期に20名からなるグルカ兵と8名のイギリス軍人がサポートしながら別のチームとしてエベレストに向かう。

 1~5の登山規則改定検討事項は、その全てがエベレスト登山に当てはまるもので、これは2008年から世界の登山界で問題になっていたこと。5.ベ-スキャンプ以上のヘリコプタ-禁止事項は、2013年のエベレスト登山で顕在化していた。

 2008年プレモンス-ン季のエベレストは我国の三浦雄一郎さんが75歳で登頂した。この年に全述したネパ-ル人のミン・バハド-ル・シェルチャンさんが76歳での登頂で最高齢登頂者とされ、三浦さんの最高齢登頂を阻んで有名になっていた。

 ようするに最高齢登頂が、世界的な注目を集めた末に競争となってしまった。その競争が5年後2013年の三浦さんの80歳登頂で、再び競争に火をつけていた。この三浦さんのエベレスト登山は、登頂後のキャンプ2から下山中にレスキュ-ヘリで降りていた。

 私達登山を志す者は、レスキュ-隊による救助や登頂後の下山中の死亡などは、登山の敗退と呼んでいる。

 登山に勝利や敗退の言葉は相応しくないが、ベ-スキャンプに無事下山するまでを登山の範囲としているので、当然のことになっている。80歳でエベレストの頂上を踏み登頂を成し遂げたが、完全にBCへ下山できずに登山が成立していない。世界の登山界の解釈としてはこの年以降もミン・バハド-ル・シェルチャンさんのエベレスト最高齢登頂が続いていたことになる。のだが、三浦さんのレスキュ-下山がなかなか見えないものだから、この2013年から三浦さんが最高齢登頂者のうわさが広がっていた。

そして、今年の、ミン・バハド-ル・シェルチャンさんの再チャレンジとなった。

 三浦さんは、60歳を過ぎて札幌市内の藻岩山に登るのも大変で、ご自分の健康と体力のために登山を始められた、と私は聞いている。ご本人は、エベレストの最高齢登頂競争など心当たりもないのではないかと思う。80歳登頂のあと、キャンプ2でドクタ-ストップだった。私が考えるに、下山中キャンプ2までは遭難一歩手前だったのでは。よく生還できたものだ。エベレストのBC以上でその登下降時に一番危険で困難なル-トが、氷河のセラック帯と云われるBCとキヤンプ1の間。

高齢者の高峰登山には経験豊富なドクタ-の同行が欠かせないことも分かった。

 

失態だったネパ-ル政府

確かに、検討中と公表することで、多くの登山者が忖度するのかもしれない。

 ネパ-ル政府は安全登山の見地から、1~5の諸問題がネパ-ルの登山に現存している情況を完全に把握していた。ミン・バハド-ル・シェルチャンさんが今年の2月にはエベレストにチャレンジする旨を表明していたのだから、3.75歳以上の登山者の禁止と5.ヘリコプターは救助活動、ロープ等の登山用品を運ぶ以外にはベース・キャンプより上部では使用できない。の両方を決定し公表していれば、みすみす犠牲者を出さずにすんでいただろう。BC以上のヘリ使用は、登りや下山時の使用には登頂証明書を出さない旨を、この事項の思想を過去に遡っての適用を閣議決定してほしかった。そうすれば高齢者登頂競争を事前に防げただろう。

ネパ-ル政府に対する思いを、私はこのように思い考えている。いかがだろうか。

 サガルマ-タ8、848mの頂上には、いくら人生経験があっても、いくら登山経験があっても、人間の滞在を許さない山自然がある。

 今年の1月、エベレストベ-スキャンプで、登山隊に同行していたリエゾンオフイサ-が高山病で死亡した。亜熱帯気候のカトマンドゥで生活している登山経験のないネパ-ルの公務員が、氷点下20度Cで空気が二分の一、それもテント生活で、普通に生活などできやしない。チョット考えれば分かりそうなものだ。

 エベレスト登山の15歳に満たない登山者の登山も禁止する、ことの検討も行われているらしい。大賛成だ。 

 

タンボチェ村3、867mからエベレストを望む

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エベレスト(左) ロ-ツェ(右)

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エベレストビユ-ホテルのテラスの窓に映るエベレスト

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エベレスト登山で死亡したネパ-ルメンバ-の碑

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エベレストの氷河セラック帯 キャンプ1の上部

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サガルマ-タ(エベレスト)8、848m

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