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積丹岳事件の最高裁判所判決 その2

 積丹岳事件の最高裁判所判決が出て、次の日12月2日(金)北海道新聞朝刊に北海道警察監察官室関係者のコメントが掲載された。

 前日に私が記事の内容を予測したが、残念ながらその予測に反したコメントが出された。

 そのコメントは「隊員は過酷な気象情況の中、自身も滑落し、命の危険にさらされながら活動を行ったものです」というものだった。

 私はこのコメントにビックリしてしまった。北海道警察監察官室関係者は警察機関の外部への広報を担当する機関なのだろうけれど、司法の判断は間違っている、と云わんばかりのコメントだ。

 警察活動は行政の仕事で、三権の司法・立法・行政の一角にあって、互いに三権分立を認める立場でなければならないはず。司法により、自分の仕事に過失ありの判決が出されたのだから、「司法の判断を厳粛に受け止めている。道民の命を守るような警察山岳救助隊活動の強化を図っていきたい」くらいのコメントは出ると思いたのである。

 札幌地方裁判所の公判中に私は2度、裁判長へ意見書を提出した。その意見書には、救助に出動した5名の隊員の全てが登山の知識不足で、登山の技術も貧弱だと、詳細な文書で指摘した。そして、山岳救助隊の行う「救助活動のいろは」も羅列して、そのいろはも分かっていないことも指摘した。ようするに私は、北海道警察山岳救助隊隊員は登山や山岳救助の素人に近いと指摘したことになる。

 コメントでは、「自身も滑落し」し救助隊員が要救助者になった、といい。助けてもらう側になった隊員が、それでも頑張って救助活動をしたのだ、と云っている様に聞こえる。

 登山(冬山登山)や山岳救助活動を知っている人は分かっていることだが、知らない人に少し説明する。山岳救助隊の行う「救助活動のいろは」とは、1.要救助者を見失わない。2.一度タッチした要救助者は離さない。3.平常心でない要救助者を救助隊に加えない。などである。

 この「救助活動のいろは」と同時に大切なことは、救助隊員の命を守ること、二次遭難の防止だ。

 「自身も滑落し」は、二次遭難発生だった。それも同時に要救助者をも滑落させている。隊員の最長滑落距離は100mで要救助者は200m、二倍落ちたことになる。。隊員は負傷していた、二倍の滑落距離から判断して要救助者も負傷し重症かもしれない。

 隊員は全員雪庇の存在を知っていたと証言(準備書面)している。絶対に起こしてはいけない二重遭難を起こしたがそれは過失に当たらず、北海道警察監察官室関係者はそれでも頑張ったのだから無罪許してほしいと云っているのだ。

 又監察官室関係者のコメントで「過酷な気象状況の中、活動を行った」という。地方裁判所の公判中に「氷点下20度」「毎秒20メ-トルの強風」「視界5メ-トル以下」の表記が頻繁に出てくる。コメントで云う、これが過酷な気象状況なのだが、一審・二審・最高裁の判決が出て、その言い分は証拠に基づかないもので、正しくないと判断されているにも関わらずだ。監察官室関係者は判決文を読んでいないのだろうか。

 なぜ「判決を真摯に真剣に受け止めている、北海道民の命を守る救助隊にしたい」と云えないのだろうか。まったくビックリポンだ。

 

積丹岳事件は、約6年前に亡くなった要救助者のご両親が原告として札幌地方裁判所に裁判提起されたもの。ここで、冬季の積丹岳遭難現場の救助隊の様子を、その公判中に北海道警察山岳救助隊から出された準備書面から振り返ってみる。

 まず最初に、救助隊は要救助者の知らせてきたGPS位置を間違えて捜索した。隊員はGPSを持っているが使用方法が分からない。準備書面では「使用方法が分からない」とは言っていない。何も書いていないので、私が勝手にそうだろうということにした。GPSを使用して捜索したが、GPS機能の一つである捜索時自分達の登路を記憶するスイッチを入れていない。他にデポ旗を雪面に刺しながら登っているが、救助隊の捜索・救助記録を残すためにもスイッチONにする必要があっただろう。

 救助隊はムダな時間を使ったが、その後に要救助者を無事に発見した。発見時に現在地の確認方法のためにマップポインタ-を使用している。その後、要救助者を抱えるように隊員が付き沿って歩いた。要救助者を抱えて進む隊員の前に、進む方向を指し示す隊員が先行して歩いた。先行の隊員は地形図からの方向を磁石で示して歩いた、と準備書面で指摘してる。

 そして、積丹岳頂上稜線上の風下側に張り出している雪庇から転滑落したのである。雪庇は磁石で示して歩いた方向より90度右方向にある。雪庇は歩き始めた場所から約50mの距離。歩き始める前に、視界が有って登りに利用してきた雪上車が見えていて、その方角が分かっていた。その雪上車の方向へ向かおうとしたのである。

 地形図と磁石を持っていたが使用方法が分からなかった。ここでも、準備書面に使用方法が分からなかったとは書いていないが、私が勝手に本当は知らなかったのだろうと思っている。

私が考えるに、マップポインタ-を使用して現在地を特定したとの救助隊員の証言は本当だろうかという疑問がある。救助隊の主張する気象状況「氷点下20度」「毎秒20メ-トルの強風」「視界5メ-トル以下」が本当だとすると、マップポインタ-の利用方法や使用方法を知ってる人には分かるだろ。地形図を平らなところに置き、その上をエンピツやボ-ルペンでなぞらなければならないのである。マップポインタ-が何か知らない人はインタ-ネット検索してみよう。救助隊が説明する気象状況では、マップポインタ-が使用できないことを知るでしよう。

 一審の地方裁判所の判決の要救助者を死亡させた救助隊の過失は、この雪庇転滑落と認定された。

 

 私は2度札幌地方裁判所に意見書を提出している。それには山岳の事故や遭難は過失が連続的に重なって死に至るケ-スが多い、と書いた。

 それは、最初の過失が無ければ次の過失は生じない。その次の三番目の過失も前の二つの過失が無ければ生じないのである。しかし、裁判での過失判定は、直近過失が重要で複数過失を認定してもらえないと聞いていたのだ。ので、あえて私の意見書は、裁判長の心に響くように書いた。

 一審判決は一つの過失のみの判断だったが、二審の高等裁判所では、一審の過失に加えて、別の次の過失を認めて損害賠償金額が上積みされた。

 札幌高等裁判所は救助隊が要救助者一人を残して、全員が離れたことを過失認定している。高等裁判所の二審判決が出された過失について触れてみよう。

 雪庇から救助隊員と要救助者が滑落した。その後、要救助者を救助用ソリに載せて稜線まで隊員の力で引き上げる作業が始まる。深雪の雪庇から落ちた人間が200mも滑落する急斜度の斜面である。持っている40~50mのロ-プを利用し、雪面上に出ていたはい松にアンカ-を取り、カラビナを滑車の役割にして引き上げれば、要救助者の反対側に3人もぶら下がれば、楽に引き上げられたものを。

 救助隊員は機動隊の中から選任されている様で、機動隊員としての体力に自信があったのだろうか。楽な引き上げ方法を思いもついていない。

 3名の救助隊員は50mを一時間かけて引き上げている。1メ-トル引き上げに1分だ。3名は疲労困憊。残す150mに順調にいっても後3時間かかる。夕暮れが迫る中、ビバ-クは考えていない。暗くなっても力任せの引き上げを継続するつもり。

 ここで、ロ-プやアンカ-を作るシュリンゲ(6mmくらいの短いロ-プ)は持っていたが使用方法が分からなかった。準備書面では使用方法が分からなかったとは書いていないが、私が勝手にそう判断する。

 それに加えて、救助隊員のいろはである要救助者から隊員が離れてはいけない、の決まりを簡単に反故にしてしまった。5名の救助隊員は救助活動のいろはを知識として体得していなかったと思われても仕方がない。疲労困憊した3名の全員が要救助者を残して、その場を離れてしまったのだ。

 離れるにあたって間違いを犯している。救助用ソリをはい松につなぎ、その繋いだロ-プの結び方が一回り二結び。これまたおかしい。それは、登山用のロ-プ結び方法でなく、ボ-イスカウトが夏用テントの張り綱をペグに結ぶロ-プの結ぶ方法だった。ロ-プを使用して登山する人は、この一回り二結びをご存じだろうか。私は実際に木の枝で試してみた。

 このこの結び方には二点の欠点があった。結んだ後に強くロ-プを引っ張ると、結び目が締まる。ロ-プを緩めても締まったまま。はい松に巻いたロ-プの輪は、ロ-プを引っ張るとはい松を締め付けないで、その反対に輪が広がってしまう。広がった輪はそのままになってしまう。

救助隊の行動は常に継続されていて、ロ-プ結びは速やかに次の行動に移る前提でなければならないはず。結び目が解きずらいのはダメ。せっかくはい松を利用してアンカ-を作ったのだから、輪が広がって抜けてはダメ。救助中に人をぶら下げたりするアンカ-(支点)は、必ず複数必要なのだが、一か所しか作っていない。

 

 私がネパ-ル暮らしをしている時、友人からメ-ルがあった。カトマンドゥの自宅のパソコンに「北海道警察を退職したばかりの友人が、ネパ-ルのトレッキングに行くので面倒を見てほしい」とメ-ルが入った。トリブバンエア-ポ-トに迎えに行き、この人には家のゲスト専用寝室を使ってもらった。このカトマンドゥのフラット、夫婦二人暮らしには意外と大きい。寝室2部屋・四畳半くらいのバストイレ2部屋にキッチンとダイニング・居間の続き部屋。

 トレッキングに来た彼小山田さんという、札幌でない地方の山岳会員で、北海道警察の山岳救助隊員だった。夏山のトムラウシ山大量遭難の時は出動したという。警察勤務の悩みを抱えていた。それは警察の休日に登山をしていると、必ず携帯電話の通じる場所に居なければならず、電話による事故や遭難出動要請で直ぐに出勤が義務付けられていた。彼悩んだ末に、仕事よりも登山の趣味を選択したのだ。一人での登山は引き返して出勤すれば良いが、複数パ-テイの登山では、同行の他のメンバ-に迷惑をかけてしまうし、携帯の電波の届かない沢登りはできない。自由に登山ができない職場環境だつた。

この話は私が積丹岳事件裁判で提出した「意見書」にもご本人の同意を得て書いておいた。登山をしている、又は登山をしていた警察官が救助隊員として活動できる勤務条件でなければ、そのうちに素人ばかりの救助隊になってしまう。

小山田さん、警察を辞めて次の職場は、登山運動具店の好日山荘。大阪本店勤務から一年して、札幌支店が新開店して札幌に戻ってきた。そして日本ハムファイタ-ズのチアリ-ダ-の女性と結婚。札幌ファクトリ-の好日山荘に買い物の時は、小山の友人小山田さんを指名して購入を、よろしく。

 

 この積丹岳事件、ベテランの登山者が意見書を提出したり、証人として出廷している。原告側からは私、前の北海道勤労者山岳連盟理事長の小山健二。そして二審では、当日積丹岳登山をしていた藤ケ谷明夫証人の陳述書。それと元道央地区勤労者山岳連盟救助隊隊長の小野武彦

 被告からは高等裁判所の二審で登山の専門家として、竹内洋岳と武川俊二・猪熊隆之の各氏。この3名、登山をしている誰でもが知っている有名人。

 二審の控訴人(一審の被告)三名の証言を、被控訴人(一審の原告)提出の準備書面では次の様に述べている。「全証人が、原審における事実関係を知らされていないばかりか、客観的事実証拠に基づく事実関係を無視して、関連性のない証言を繰り返すだけに終始していた」

 

 約20Cmにも及ぶ裁判記録を顧みるのは困難だ。ここまでの説明は思い出しながらの記事。次回は札幌地方裁判所公判中に裁判長に提出した私の「意見書」を見てもらおう。

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