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ネパ-ルの登山に関わる法律

 11月27日(日)札幌のりんゆうホ-ルで北海道雪崩講習会22回目の総合理論講習会が始まった。私の所属するNPO法人北海道雪崩研究会と道央地区勤労者山岳連盟の2団体の主催行事。日本山岳会北海道支部が協賛団体、札幌市と北海道の名義後援や山岳運動具店3社の特別協賛などで開催している。NPO法人北海道雪崩研究会は私がこの5月まで会長を務めていたので、今回は気が楽に講師として勉強のために参加した。

 講習会はまる一日受講者を講義づけにする、内容の濃いものだ。なにせ受講者の今後、決して雪崩に遭って死ぬことがない様にするもの。今年も、今までに蓄積した知識と技術の上に、更に新しい知識を重ねることができた、と思っている。人の生死に関わる講習会は真剣さが違うと思うのは私だけだろうか。

 講習会を終えて、恒例の一杯飲む懇親会があり、共同開催団体の道央地区勤労者山岳連盟副会長さんが隣に来て、山岳会創立周年記念行事にネパ-ルヒマラヤ遠征を考えているそうな。そこで今年の4月に行われた北海道海外登山研究会の発表で、5800m以上の山の登山料が高い報告があり。記念登山は5800mを超えない山にしたいとのこと。

 実はこの研究会報告にあった登山は、ネパ-ルの地方裁判所で出された判決の後に行われていた。最高裁判所判決の出る前の山行だったのだ。裁判は環境省登山局が原告で、被告はネパ-ル山岳協会。内容は6500m以下の登山許認可は、山岳協会が行っているのは違法で、政府(登山局)の専任事項である、との訴え。6500m以上の山は政府が登山届を受け付けていた。以下の山はネパ-ル山岳協会なのだが、これに関する法律はない。

 地裁判決では、「民間の山岳協会が本来ある政府の仕事の許認可権を行使するのはおかしい、政府が行うべき」だった。付帯の判決で5800m以上と以下で登山料に差をつけたのだ。要するに5800m以下は登山ではなくトレッキング扱いをする判決。

 山岳協会は、今まで組織運営に必要な財布の中身を失うことになった。登山届の手続に伴う手数料が入ってこなくなる。登山隊がカトマンドゥに着き諸手続きで山岳協会を訪れた時の手土産も気にしたかどうかは不明だが。最高裁に上告せざるを得ない。

最高裁は粋な判決を出した。地方裁判所判決を破棄、元通りで良い。

 私はカトマンドゥでは「嫌なことはしない」と云いつつ生活している。その反面楽しいことは積極的だ。日本人の友人がネパ-ル山岳協会の会員で、その関係でネパ-ル山岳協会の会長さんと一杯飲む機会があった。彼の名刺には、なんと政府の役人で、その仕事が山岳協会会長なのだ。他にも政府の仕事と兼業務なのかもしれないが。最高裁の判決は実態に即したものだった。

 山岳協会の会員組織は全員(?)がネパ-ル人。私の日本人の友人はネパ-ル生活40年以上で、ヒマラヤ登山にも詳しい日本人が例外的に会員になっている。登山局の新制度制定や制度改定前の第三者審議委員会などの委員も務めている。

 話を初めに戻そう。5800m以上と以下で違う届け出がいることで、以下の山を考えていた連盟副会長さん、地裁判決がチャラを知り、元の規定の6500以下にすることで納得。

 ネパ-ル国は観光立国。世界の8千m峰14座のうち8座を要するヒマラヤ登山の国と云える。ヒマラヤの山々や登山に関する手続などは法規定されている。法律は時には事実と異なることも可能だ。例えば、山の標高。例えば実測で6543mとしよう。これをネパ-ル政府が発表する時には、議会で法律の制定や内閣閣議決定をする。これがほかの国と違う真の観光立国の法規範。山の高さが法律になっている。日本では国土地理院が発表するだけで済む。閣議決定の段階で古い資料のままの6540mとしたら、3m足りない標高が公式標高になる。世界中に出回っている地形図の標高とネパ-ル政府の公式標高が,約半数の山で違うのはこのため。実測に合わせるには内閣の閣議開催が必要になる。

 日本の日高山脈とヒマラヤは地球の造山運動でほぼ同時期にできた。今でも少しづつ高くなっている。

 

 今日12月1日のお昼頃、友人の市川守弘弁護士から電話。最高裁判所が北海道知事の上告を棄却した。高等裁判所の判決が確定した。積丹岳事件の最終判決だ。原告や支援の私達の勝利だ。国や地方公共団体を相手にした訴訟は、勝訴が3%と云われている。その3%だ。

 市川さんは、私が北海道自然保護連合の事務局長をしている時に彼は北海道自然保護協会の副会長さん。士幌高原道路や日高横断道路建設に反対の、一緒に論陣を張った仲間。職業は弁護士だが、土曜・日曜日は自然保護活動の人。弁護士活動を休んで自然保護の勉強に、夫婦でアメリカに留学もした。

 冬の積丹岳で北海道警察山岳救助隊が要救助者を助けられず、死亡させた事件。これは公の救助隊の過失を認めた日本国初の判決となった。私は札幌地方裁判所裁判長宛てに二度意見書を提出した。原告も被告も裁判官さえも登山を知らず、山岳救助の知識と技術を知らない裁判だった。そして、何よりも北海道警察山岳救助隊の隊員が登山を知らず、貧弱な救助の知識と技術には驚いたものだ。

 私の人生から登山を引いたらゼロではなくマイナスになると私の女房は云う。その私の意見書が役にたっただろうか。

 北海道の山岳関係者のほとんどは、北海道警察救助隊を責めるのは酷と裁判を提起した損害賠償請求の原告に批判的だった。ヒマラヤ登攀で著名な山屋さんの多くも、北海道警察救助隊側からの意見書を提出している。新聞紙上にも北海道警察を擁護する記事ばかり。インタ-ネットには、原告はバカ・非国民と云わんばかり。

 裁判に6年を要した。この間北海道警察は自分達の取った行動は正しかったと主張し、以後6年間も救助隊の強化を怠ってきた。この6年間、遭難した人達は、旧態然とした知識と技術の道警救助隊に助けを求め続けたのだ。

 明日の新聞朝刊には、北海道警察山岳救助隊強化方針の記事が掲載されますように。

 

タンボチェゴンパとアマダムラム峰6812m ( 地形図の標高6856m  )

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